前年度の研究でえられた知見を基礎にして、より具体的な側面で研究を展開した。 1.ウィトルウィウスの視覚補正理論が、アルベルティ、セルリオにどう引き継がれたかを解明した。 2.18世紀初頭のフランスの建築アカデミーにおいて視覚補正についてなされた議論を、議事録、会合に提出された手稿レポート、アカデミー教授による講義録に点在する断片的な記述から復元した。そこでは室内空間における視覚補正がもっとも重要視されていたが、その理論がやはり、理想的な視距離を前提としていることを理論的に解明し、その視距離を数学的手続きにより求めた。 3.フランスの17、18世紀における都市住居、邸宅、宮殿建築の室内空間にかんするデータを可能なかぎり多数あつめ、約150棟を対象として、室内空間の幅、奥行き、天井高を計測し、それらの平均と偏差をもとめた。つぎにそれらの値と、2.で得られた理想的な視距離とを比較し、両者が近いことを確認した。 4.ティピカルと判断された住宅例に関しては、その内部空間をコンピューター上に復元し、実際の視点からどう視覚的に認識されるかを確認した。 以上を、日本建築学会の九州支部研究報告会に発表した。 建築アカデミーで議論された理論的な視距離---視覚補正と空間の寸法に関する研究 その1 日本建築学会九州支部研究報告会・第37号・3計画系、1998年3月) 17-18世紀フランスにおける視覚補正理論と都市建築の内部空間のスケールとの関係---視覚補正と空間の寸法に関する研究 その2 日本建築学会九州支部研究報告会・第37号・3計画系、1998年3月)
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