(1)重要文化財の場合の保存修復の考え方と方法の整理 これまで百年の蓄積をもつ重要文化財の修復技術は、その要素を三点に集約することができる。1)十分な調査、2)技術の保存、3)記録の作成である。文献、現地取材、関係者への聞き取りによってそれらを整理した。 (2)修復された地域文化財のリストの作成 今年度は、東北・北海道に地域をしぼり、北海道と各県に、市町村指定の文化財指定の情報提供を依頼したうえ、個々の市町村に問い合わせることによってすでに修復された文化財に関する情報を得た。 (3)地域文化財の修復状況の実地調査 作成したリストにしたがい東北・北海道すべてを範囲としたが、修復されたすべての文化財を扱うと膨大にすぎるので、明治以降で洋風建築を主体とすることにし、大半を実地調査した。調査内容は、事業の態勢、事業の計画、調査の内容、修復方針の検討、実施計画、記録の作成、維持管理態勢、活用状況などがどのようになされているかを、建物を観察するとともに、関係者に聞き取り取材した。今後さらに各地の実地調査をすすめたい。 (4)現在までの調査における所感 これまで把握されいない(3)について、今後、全国的な調査をすすめる予定であるが、現在までのところでも、各地・各建物によって修復の考え方や方法はかなり異なることが明らかになりつつある。異なるというよりも、修復の目的やあり方の基本が認識されていないまま、一般建築と変わらない改修がなされている場合も多い。共通の指針の必要性を強く感じる。なお、今回訪ねて寒冷降雪地帯の冬場の管理や活用の困難さが理解できた。
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