本研究費により高周波電源を購入し、既存の電源と合わせて二種類の異なるターゲットの交互連続成膜を実現した. 膜応力源であるMo膜に関してはdcスパッタ条件(電圧、電流、スパッタガス圧力)を広範囲に振って成膜し、応力発現との関連を調査した.その結果、Mo膜応力は電圧、スパッタガス圧を一定にした場合であっても、膜厚により変化することが明らかとなった. Fe-Niインバースパッタ膜に関してはFeとNiの複合ターゲットを用いることによって純Feから49at%Niの範囲で組成制御を実現した.アズデポ膜はアモルファス構造であったがfcc構造を実現するためには真空中熱処理が必要であった.この熱処理により構造的にはNi組成増加に伴いbccからbccとfcc混在、そしてbccが消失しfcc単相になる直後の組成25at%Niで熱処理前に比べ最大の飽和磁化減少を示した.一方、Au膜を下地として成膜するとアズデポ膜で既にfcc単相膜が形成できることが明らかとなった.このAu下地の膜と熱処理膜は同組成であっても面間隔に差異があり対応する原子磁気モーメントにも差異が認められた.この意味でもFe-Ni合金系に於いても原子間距離による磁気モーメント制御の可能性が見出された. これらの結果を踏まえてFe-Ni膜上にMo応力膜の積層を試みた.しかし単純な積層では磁性膜全体の面間隔を変化させるには至らなかった.従って、nmスケールの周期での積層多層膜を作製することで応力伝達する方法を平成9年度に行うこととした.
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