8年度に基板温度を室温としてCrN/CN_X人工格子膜を作製し、X線回折、RBSによる構造評価と微小硬度の測定を行った結果、人工周期3nm、CrN層/CN_X層の膜厚比3:1の試料が最大硬度を示し、CrN単層膜の約1.2倍、CN_X単層膜の約1.5倍の値であった。また、硬度のCrN層/CN_X層の膜厚比に対する依存性が最も大きく、人工周期の増大とともに硬度は低下したが、岩塩型窒化クロム無配向微結晶層と非晶窒化炭素層が交互に積層した構造には変化が無く、硬度の増大に対応する構造的特異性はみられなかった。9年度は、基板温度および窒素組成の効果を検討した。人工周期3nm、CrN層/CN_X層の膜厚比3:1の試料を基板温度を300℃として作製すると硬度は増大したが、基板温度を400℃とすると層状構造が形成されなくなり、硬度の値も低下した。この結果から、硬度の増大には層状構造の形成が必要であることが示唆された。なお、微小硬度に対する窒素組成の顕著な影響は見られなかった。[CrN(t)/TiN(t)]n多層膜については、X線回折パターンのプロファイル解析を行った結果、良好な岩塩型[111]配向性を示すが、界面拡散層が1.0nm以上あることが判明した。[CrN(t)/TiN(t)]n多層膜において顕著な硬度の人工周期依存性はみられない原因の一つが、界面における相互拡散であることを明らかにした。また、CrN/NbN多層膜も作製したが硬度の増大はみられなかった。以上の結果をとりまとめ、多層膜の構造と微小硬度の相関について検討した。
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