研究概要 |
燃料メタンの直接利用において、固体酸化物燃料電池(SOFC)のエネルギー変換効率を高めるために、メタン燃焼反応に高い活性を示す電極触媒(アノード)の開発を試みた。このために、同種イオンが層状に規則配列した結晶構造をもつ層状遷移金属酸化物に着目し、メタンの電気化学的な酸化反応におよぼす活性化効果について、以下の項目を検討した。(1)スピネル型λ-MnO_2におけるイオン交換にともなう結晶構造変化とMnイオンの表面価電子状態変化、(2)HCoO_2粒子およびHCrO_2粒子の微細構造とアノード分極、および(3)複合型の層状遷移金属酸化物(LiCoO_2,LiNiO_2,PdCoO_2)によるメタンのアノード酸化反応活性化。(1)LiMn_2O_4におけるプロトン置換反応は粒子表面で起こるため、バルクはλ-MnO_2、表面はHMn_2O_4の異なった組成を、それぞれもつことを示し、メタンと気相酸素の低温燃焼反応ではプロトン脱離にともなうMnイオンの表面価電子数の増加が寄与する機構を明らかにした。(2)プロトン置換型酸化物粒子(HCoO_2およびHCrO_2)の分散状態が、アノード分極におよぼす効果を検討した。これらの酸化物粒子を多孔質電極基質に分散し、酸素イオン伝導型10mol%Sm_2O_3-Bi_2O_3電解質に接合した場合、メタンのアノード酸化反応に対しては期待した効果が得られなかったが、水素に対しては高い活性化効果を示した。この活性化効果は、酸化物粒子の分散量に依存することを示し、さらに、電解質-電極界面における酸化物粒子の均一接触による分極抵抗低下に基づくことを明らかにした。(3)複合型遷移金属酸化物のPdCoO_2粒子を多孔質白金電極に分散させ、イットリア安定化ジルコニアに接合した場合、メタンのアノード酸化反応に対する高い活性化効果を見い出した。この効果は、PdCoO_2の金属的電子伝導性とメタンの部分的酸化反応で生じたCO分子の解離吸着を抑制する電子的相互作用に基づくものであることを明らかにした。
|