市販のバイクリスタルMgOと単結晶MgOを試料として用いた。バイクリスタルMgOを構成する2つの結晶粒子の表面は共に(100)面であり、これらの[010]方向の間の角度は24°の傾角粒界を形成していた。表面は研磨されており、粒界は肉眼やAFMでは判別できないが、偏光顕微鏡では判別できた。これを1100〜1400℃に10分〜28h加熱し、粒界溝の発達をAFMで観察した。その結果、粒界溝の幅wは時間tに対してt^<1/4>に比例し、表面拡散が粒界溝の発達を律速していること、AFMでは1100℃のような低温でしかも短い時間での粒界溝の発達が調べられることが分かった。この粒界溝の発達のデータを用いて計算した表面拡散係数は他の方法で得た過去の文献値と良い対応を示した。 単結晶MgOの表面も(100)面で、これに半導体のフォトリソグラフィー技術を利用して表面に多重溝(正弦波形)を施した。これを1050〜1200℃で2〜10h加熱して振幅Aの時間変化をAFMで調べた。Aとtの関係を解析して拡散係数を求めたところ、これらは粒界溝の発達で求めた表面拡散係数より3桁程大きいので表面拡散係数ではないと思われる。つまり、MgOの多重溝の平滑化は表面拡散以外で律速されているようである。 バイクリスタルと単結晶の両方のMgO試料で加熱時間が長くなると表面に突起が生成した。これをAFMで調べたところ加熱時間と共に大きくなり、高温程その傾向は強かった。この突起の生成原因などの詳細については今後検討する予定である。
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