研究概要 |
中国産土状黒鉛について共存する粘土質不純物を同定するとともに,分液漏斗を用いる予備実験と島崎製の向流式往復回転式液-液連続抽出塔による粒子分離に基づく精製実験を行い,高純度精製方法としてのフラッシング法の工業的実用化について検討した。 平均粒径2μm,灰分15.5mass%の精鉱を出発試料とし,その水懸濁液から黒鉛を分散状態のまま灯油相へ抽出し,一方で石英,カオリナイト,雲母粘土鉱物,緑泥石などの粘土質粒子を水中に残す分離条件を決定した。懸濁液をpH4.2付近で還元剤およびキレート剤で処理することにより構成粒子間を膠結している水酸化鉄(III)化合物を溶解した結果,黒鉛と粘土質粒子がほぐれて分散状態となり,同時に黒鉛粒子は表面酸性基の電離が抑制されて疎水性が向上した。 不純物は,1回目の分離操作でほとんどが除去され,油懸濁液から水相に分離する形となる2回目以降の分離操作では数%〜10%が徐々に除去された。灰分は81%除去されて3.0mass%に減少した。同時に灰分中の酸化鉄(III)は8.1mass%から1.7mass%に減少した。連続抽出装置では分液漏斗を用いる場合のような気泡を巻き込んだ凝集体が形成されないだけでなく,円筒型翼の往復動によって高剪断力が生じ,黒鉛の捕集に適した微細な油滴が形成されることが高い精製効率に寄与している。精製物では黒鉛の剥離により約30%比表面積が増大した。 油相中の黒鉛はノニオン界面活性剤とNa_2CO_3の添加により水相に移行させ,酸洗浄と水洗後に精鉱として回収した。また油相は酸洗浄により再生した。以上,フラッシング法は黒鉛の精製法として,従来なかった高効率であり,操作が簡単なことから十分に実用可能と認められる。
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