ゾル・ゲル法を用いて作製したEr(III)を含有するNb_2O_5多結晶、及びAl_2O_3-GeO_2ガラスに対して、近赤外光を可視光に変換するアップコンバージョン蛍光が観測された。また、この蛍光や電子スピン共鳴(ESR)の結果からEr(III)イオンのクラスター化について考案した。以下に具体的に示す。 乾燥ゲル100Nb_2O_5-lE_<r2>O_3を500℃で熱処理すると非晶質ガラスが得られたが、550℃の熱処理ではTT-Nb_2O_5相に結晶化した。このガラスでは805nm光励起によるアップコンバージョン蛍光が観測されなかったが、結晶では弱いながらも544nm(緑色)にこの蛍光が認められた。ガラス及び結晶において、液体ヘリウム温度で測定したESRは、Er(III)に困る信号を80mT付近に明瞭に示し、Er(III)はクラスター化せずによく分散していると考えられる。 xAl_2O_3-(99-x)GeO_2-lE_<r2>O_3(x=0-5)ガラス中のEr(III)イオンに対するアップコンバージョン蛍光は、525、550、660nmに観測され、これらはそれぞれ励起状態^2H_<11/2>、^4OFS_<3/2>、^4F_<9/2>から基底状態^4I_<15/2>への遷移による蛍光である。この内、660nmの蛍光強度がxの値の減少とともに相対的に強くなるが、これはEr(III)イオンがクラスター化し、クラスター内の燐接するEr(III)イオン間でエネルギー移動によるクロス緩和が起こり、^4F_<9/2>準位の占有数が増加することで説明される。また、xの値の減少ととに、80mT付近のEr(III)に困るESR信号の強度が減少したが、これもクラスター内のEr(III)イオン間の常磁性的磁気双極子-磁気双極子相互作用、あるいは反強磁性的スピン間相互作用により理解される。
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