本研究は超伝導複合材料を構成する成分相のクラスターの相転移的非線型成長、すなわち臨界挙動に着目して、電気的磁気的性質の物性挙動と構成相のクラスター構造との相関を調べて、材料評価のための有用な基礎的知見を得ることを目的とする。本年度は高温超伝導Bi系銅酸化物Bi-Pb-Sr-Ca-Cu-O2223化合物相にAg金属を添加し焼結法にて作製した複合材料試料を主な対象として、その系でのAg相クラスターと銅酸化物相クラスターの形成過程を明らかにした。この複合材料については、電気伝導度と超伝導による反磁性帯磁率の測定を行い、2つの相について互いに著しく異なるパーコレーション臨界挙動が見出された。Ag相は体積分率0.25でパーコレーション転移を示し、臨界指数t=1.1とs=0.66の臨界挙動を示した。これによりクラスターの構造が3次元的であることを明らかにした。しかしながら、銅酸化物の超伝導クラスターについては体積分率が0.57のような高い閾値になって転移が現れ、臨界指数は1.2の臨界挙動を示し、前者と著しく異なる結果を得た。このこの挙動は結晶粒の著しい異方性と結晶粒間の超伝導弱結合の性質が本質的に反映され、クラスターが2次元的に成長することから理解されることを明らかにした。その他、Nb-Al_2O_3の複合材料の物性挙動とクラスター構造との相関についてもその詳細を明らかにしつつある。
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