本研究は超伝導酸化物と金属の2相複合材料および超伝導酸化物に不純物を多量に添加して作製した複合材料を対象として、構成相のクラスターの臨界挙動的振る舞い、すなわちパーコレーション過程に着目して、材料の電気的磁気的超伝導特性と材料の複合構造との相関を調べ、その知見を材料評価へ適用することを試みるものである。前年度は主として高温超伝導酸化物Bi-Pb-Sr-Ca-Cu-O2223化合物と常伝導金属Agの複合材料を対象として実験を行い、その超伝導特性が2相の構成相のクラスターが形成されるときのパーコレーション過程によって特徴づけられることを明らかにした。今年度は高温超伝導酸化物Y_1Ba_2Cu_3O_yに異なった濃度の不純物Prを添加して作製した超伝導複合材料について、その電気抵抗と反磁性の超伝導特性を調べたところ、構成相がナノスケールの微細構造をもつパーコレーション系が実現されていることが明らかになった。Prは酸化物結晶中のYと置換する配置をとり、酸化物を絶縁体化する。Pr_xY_<1-x>によってYとの相対濃度をxで表わすとき、濃度の増大とともに超伝導転移温度とゼロ抵抗温度は低下して、超伝導の劣化が顕著になる。xが0.4以上の濃度になると超伝導特性は外部磁場にかなり敏感になることが分かった。さらに、xが0.6を越えると、この複合体は超伝導体から絶縁体に相転移する。この2つの遷移点は2次元系のパーコレーションの閾値と密接な関係があることを明らかにした。
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