研究概要 |
我々はNiAlの圧縮強度およびクリープ強度を改善するのにIr添加が極めて有効であることを発見した。Ir添加したNiAlは1273KにおいてNiAlの3倍の圧縮強度を示し、クリープ速度はNiAlに比べて3桁ほど低下する。今回、クリープ試験条件(負荷応力および試験温度)をより広範囲で行うことによってクリープ速度の応力依存性を詳細に調べ、転位観察によって(Ir,Ni)Al合金のクリープ機構および高温強度改善の機構を検討した。 アーク溶解にて作製したNiAlおよびNiAlにIrを5mol%添加した(Ir,Ni)Alボタン合金を1473K×14daysの溶体化処理後、ワイヤーカット放電加工機を用いて2×2×5mm3の角柱に切り出し試験片とした。インストロン型試験機を用いて負荷応力10〜150MPa、1273〜1373Kの温度領域で定荷重圧縮クリープ試験を行った。 実験の結果は以下のようにまとめられる。 (Ir,Ni)Al合金の応力指数n値が負荷応力の増加によって約3から5以上に変化することが分かった。また、試験温度が上昇するとn値は低下する。NiAlの転位組織は発達したサブグレインが形成され、グレイン内部にはほとんど転位が見られない。一方、(Ni,Ir)Al合金はn値が3の領域では均一に分布した転位が見られ、n値が5以上の領域ではサブグレインが形成され、グレイン内部にも均一に分布した転位が観察される。 以上まとめると以下のように記述される。 転位観察の結果、(Ir,Ni)Al合金のサブグレインは2つの異なるバーガースペクトルからなる転位のネットワークであることが分かった。これは刃状転位の上昇によって形成されるNiAlのサブグレインと異なる。おそらく(Ir,Ni)Al合金では多重すべりによる転位反応で不動転位が形成され、その安定化配列によって転位のネットワークが形成されると考えられる。Ir添加による強化機構は不動転位の形成による内部応力の増加であると考えられる。 今後はIr添加がNiAlのすべり系に及ぼす影響を調べるため、NiAlおよび(Ir,Ni)Al単結晶を作製してNiAlのIr添加による強度の結晶方位依存性を調べる必要がある。
|