Ti_3Al単結晶をC軸に平行に圧縮すると{112^^-1}<1^^-1^^-26>錐面すべりが起こる。その降伏応力は、温度の上昇と供に増大し、いわゆる「降伏応力異常(The Yield Stress Anomaly : Y.S.A.)」を示す。錐面すべりのY.S.A.は、刃状転位固有の性質と関係している。刃状転位が関与するC軸圧縮試験した単結晶から種々の結晶面に沿って薄片を切り出し、各温度での転位構造の観察を行い、次の結果を得た。 1.力学物性試験 臨界分解剪断応力(CRSS)は、液体窒素温度(-196℃)から室温付近まで、減少し、以後、上昇して400℃付近で平坦部を示すが、上昇を続け、700℃で極大値に達したのち急減する。 2.電顕観察結果 (1)-196℃で観察される転位は主としてらせん転位であるが、-70℃では、刃状転位が支配的である。従って、転位構造からするとTi_3AlのY.S.A.は-70℃付近から始まると考えるのが妥当である。この温度では、1/3<1^^-1^^-26>超格子転位は1/6<1^^-1^^-26>超格子部分転位に分解している。その分解幅は30nm程度で、APBエネルギーは132mJ/m2になる。 (2)室温からCRSSが極大値を示す700℃までは刃状転位が優勢で、これらの刃状転位の部分転位への分解幅は一定でなく、数10nmからμmオーダーまでの広い分布を示す。このことから、この温度範囲では超格子部分転位が独立に運動し、変形を律速しているものと理解できる。実際、400℃付近から、超格子部分転位が1/6<1^^-1^^-26>---->1/6<1^^-013>+1/6<01^^-13>の反応式に従って分解し、分解した部分転位から微小な転位ループの形成されるのが観察された。このループ形成とY.S.A.の機構との関連を明白にすることは今後の課題であるが、計算機シミュレーションの手法が何らかの問題解決の糸口を与えてくれるものと期待される。
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