火力発電プラント用タービンブレ-ドに代表されるような高温構造材料では、実用中に内部構造の変化などによりクリープ劣化を起すことが多く、材料に対する信頼性の点からクリープ強度予測が問題となっている。 実用材では析出粒子等のように熱的には安定性に欠ける粒子で強化している場合がほとんどで、実際分散粒子の分散状態事態がクリープ変形中に大きく変わることが報告されている。しかし、従来から研究されてきた安定粒子を含む分散強化合金のクリープ研究で得られる結果は、直接実用材料に適用することはできない。そこで本研究ではこれまでの安定粒子に対する研究で得られた結果を基礎にして、クリープ変形中に粒子の分散状態が変化する場合のクリープモデルを構築するとともにクリープ予測を行った。またこれと並行に、析出挙動が明らかなA1-1.0mass%Siの析出硬化型合金を用いてクリープ変形中に分散状態が変化するような条件で高温クリープ実験を行い、実験結果と構築したモデルとの突き合わせを行って、分散粒子が安定でない場合の高温クリープ挙動の予測について明らかにした。 その結果、本研究で提案した予測モデルは析出硬化型合金の高温クリープ速度の予測に有効であることのみならず、それを基に耐クリープ性に優れる新しい高温用構造材料の開発にも有効であることを明らかにした。すなわち、純母相材の高温変形挙動、状態図から知られる溶質原子の固溶限の温度依存性、溶質原子の拡散係数およびオトスワルド成長に関する各物性値を吟味すれば新材料の開発にも有効である。これらの成果については後日国内及び国際学会において公表の予定である。
|