研究実績の概要 【目的】定荷重クリープ試験成績の解析とその物理的な意味付けは工学上極めて重要である。しかし、定荷重クリープでは歪の増加にともない応力及び組織が刻々変化するので解析が困難であり、定荷重クリープ挙動の解析はこれまで放置されてきた。本研究では、全寿命の大部分を占める第3次クリープ挙動が仮想的初期歪速度^ε_oと歪速度加速因子Sで記述できることに立脚し、このパラメータの物理的意味を明らかにすることである。 【結果】Al及びAl-Mg合金では定応力クリープ試験の成果が蓄積されている。それゆえ、これらの単相金属材料の定荷重クリープ試験を種々の試験条件のもとで行い、仮想的初期歪速度^ε_oと歪速度加速因子Sの温度および応力依存性を調べて、実用鋼の結果と比較した。その結果、単相合金の結果は析出物を含む実用鋼の結果と際立った相違があることが分かった。すなわち、実用鋼ではS値が応力に依存するにも拘らず、単相材料のAl及びAl-Mg合金ではS値が応力及び温度に依存せず、それぞれ、5.3及び3.7であった。興味深い点は、S値が定常クリープ速度の応力指数nと一致することである。また、^ε_oの温度依存性を調べたところ、得られた活性化エネルギーは定常クリープの見掛けの活性化エネルギーに一致した。これらの事実は、^ε_oが定応力下における定常クリープ速度に一致することを示している。以上のことより、思考実験[鉄と鋼、81、[8](1995)、862-867]から導いた結論が正しいことが立証された。
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