ニッケル-水素二次電池用水素吸蔵合金の高機能化に関する研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08650819
• 研究機関: 東京都立大学
• 研究代表者: 釜崎 清治 東京都立大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60106614)
• キーワード: Ni-MH電池 / 水素吸蔵合金 / 希土類系合金 / 表面解析 / La(OH)_3ウイスカー / Ni-Co合金微結晶 / 長寿命電極

研究概要

高密度Ni-MH電池の負極に使用される水素吸蔵合金には、自己放電、腐食の抑制などのため種々金属が添加されるが、その効果の具体的な発現メカニズムは不明で、事前にその効果を予測した合金設計はなされていないのが実情である。
本研究では、TEM-EDS、SEM、XPSなどによる合金の表面構造解析を通してその効果を予測し、高性能・希土類系AB_5(LaNi_5)型水素吸蔵合金の設計をすすめた。
平成8年度に得られた知見(LaNi_5のNiの一部をAl、Coなどで置換した三元系合金表面には、アルカリ電解液との反応によって、LaNi_5合金には認められないLa(OH)_3ウイスカーの成長と、これに誘発された金属NiあるいはNi-Co合金微結晶の析出が生じ、水素吸蔵合金電極の負極特性は、この微結晶堆積層の電気化学特性に大きく依存する)は、合金設計のポイントが(1)微結晶析出を誘発するウイスカー成長を促すアルカリ易溶成分および(2)表面生成合金微結晶成分の選定と量比の決定にあることを強く示唆した。そこで本年度は、ウイスカー成長が顕著なAlを易溶成分に、また母合金中のNiと全率固溶が可能で、単相からなる合金微結晶の生成が期待されるCoを後者に選択し、高性能LaNi_<5-(a+b)>Co_aAl_b合金の設計・合成と評価を実施した。
Al置換量が固溶限であるb=0.4を越える合金では、その一部がAl_2O_3として表面に残存し、過多のAl置換は吸蔵水素の利用率の低下を招くことが明らかとなった。一方、ウイスカー成長に誘発されて生成した微結晶はNi-Co固溶合金で、均質な置換構造をとるNi/Co=3組成でもっとも耐食性に優れ、充放電サイクル過程での劣化も大きく抑制された。
以上に基づいて合成されたLaNi_<3.5>Co_<1.1>Al_<0.4>合金の最大放電容量は320Ah/kg、劣化速度は0.01Ah・kg^<-1>・cycle^<-1>で、高容量・長寿命合金であることが検証された。

研究成果

• [文献書誌] 釜崎清治: "水素-その状態と密度-" 表面技術. 48・4. 426-427 (1997)
• [文献書誌] 伊藤 学: "高純度フッ化水素による水素吸蔵合金LaNi_<4.7>Al_<0.3>の表面改質と水素化特性" 表面技術. 48・5. 565-567 (1997)
• [文献書誌] 伊藤 学: "無水フッ化水素で表面改質したLaNi_<4.7>Al_<0.3>の水素吸蔵特性に及ぼす大気保存の影響" 表面技術. 48・12. 1207-1211 (1997)
• [文献書誌] 青野文昭: "無水フッ化水素で表面改質したLaNi_<5-x>Al_x(X=0,0.3)の水素化・脱水素化特性に及ぼすCOの影響" 表面技術. 48・12. 1212-1217 (1997)
• [文献書誌] Seiji KAMASAKI: "Surface Modification of Hydrgen Storage Alloy LaNi_5 by Ball Milling with Al and Co Powders" J.Sur.Fin.Soc.,Japan. 48・12. 1235-1236 (1997)
• [文献書誌] Seiji KAMASAKI: "Characteristics of the Alkaline Pretreated AB_5 Type Hydrogen Storage Alloys as a Negative Electrode in Ni-MH Battery" J.Sur.Fin.Soc.,Japan. 48・12. 1237-1238 (1997)
• [文献書誌] 釜崎清治(分担執筆): "表面技術便覧(表面技術協会編)" 日刊工業新聞社, 1800 (1998)
• [文献書誌] 釜崎清治(分担執筆): "水素吸蔵合金-基礎から最先端技術まで-" エヌ・テイー・エス, 600 (1998)