環境対応型高密度Ni-MH電池の負極に使用される水素吸蔵合金には、自己放電、腐食の抑制などのため種々金属が添加されるが、その効果の具体的な発現メカニズムは不明で、事前にその効果を予測した合金設計はなされていないのが実情である。本研究では、TEM-EDS、XPSなどによる合金の表面構造解析を通してその効果を予測し、高性能・希土類系AB_5(LaNi_5)型水素吸蔵合金を設計・合成し、評価した。 先ず、LaNi_5のNiの一部をAl、Coなどで置換した三元系合金表面には、アルカリ電解液との反応によって、LaNi_5合金には認められないLa(OH)_3ウィスカ-の成長と、これに誘発された金属NiあるいはNi-Co合金微結晶の析出が生じ、水素吸蔵合金電極の負極特性は、この微結晶堆積層の電気化学特性に大きく依存していることを明らかにした。これは、合金設計のポイントが(1)微結晶析出を誘発するウィスカ-成長を促すアルカリ易溶成分および(2)表面生成合金微結晶成分の選定と量比の決定にあることを強く示唆した。そこで、ウィスカ-成長が顕著なAlを易溶成分に、また母合金中のNiと全率固溶が可能で、高耐食性の単相からなる合金微結晶の生成が期待されるCoを後者に選択し、高性能LaNi_<5-(a+b)>Co_aAl_b合金の設計と評価を実施した。 Al置換量が固溶限であるb=0.4を超える合金では、その一部がAl_2O_3として表面に残存し、過多のAl置換は吸蔵水素の利用率の低下を招くことが明らかとなった。一方、ウィスカ-成長に誘発され生成した微結晶はNi-Co固溶合金で、均質な置換構造をとるNi/Co=3組成で最も耐食性に優れ、充放電サイクル過程での劣化も大きく抑制された。以上に基づいて合成されたLaNi_<3.5>Co_<1.1>Al_<0.4>合金の最大放電容量は320Ah/kg、劣化速度は0.01Ah・kg^<-1>・cycle^<-1>で、高容量・長寿命合金であることが検証された。
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