研究概要 |
1.研究目的 沸騰水型原子炉では,ステンレス鋼製機器・配管の粒界応力腐食割れ(IGSCC)および照射誘起応力腐食割れ(LASCC)の予知・保全対策の確立が急務となっている。SCCのクラック伝播速度は鋼の腐食電位が臨界電位を越えると急激に増加することから、腐食電位をモニタすることができれば,割れ発生やその進展を予知することが可能になる。本研究では原子炉冷却水中での腐食電位計測が可能な電気化学電位(Electrochemical potential,ECP)センサを開発することを目的とする。 2.研究成果 (1)高温における長期耐久試験:平成8年度の研究において開発した固体電解質ECPセンサとPt水素電極とを組み合わせ、起電力の経時変化を長期間に渡って測定した結果、起電力のドリフトは小さいことが分かった。 (2)純水中におけるステンレス鋼の腐食電位の測定:試作したECPセンサを用いて、BWRの運転温度である290℃におけるSUS304ステンレス鋼の腐食電位を測定した結果,水中の溶存酸素(DO)濃度による腐食電位の変化が明らかになった。 (3)純水中におけるステンレス鋼のアノード分極曲線の測定:試作したECPセンサを用いて、250〜300℃の純水中におけるSUS304ステンレス鋼のアノードおよびカソード分極曲線を測定した。本測定により,固体電解質ECPセンサが電気化学測定用照合電極として機能することが確かめられた。 (4)標準水素電極基準の電位への換算テーブルの作成:固体電解質ECPセンサで測定された電位を標準水素電極基準の値に換算するために必要なテーブルを、平成8、9年度の実験を通じて得られたデータ、並びに熱力学的計算値に基づいて作成した。
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