軽量かつ高強度を有する炭素系複合材料の耐酸化性向上のためのコーティングシステムとして炭素と2000℃以上に共晶点を持ち、しかも耐酸化性があるIrを選び、そのスパッタ法による成膜と成長組織を高分解能電子顕微鏡を用いて観察した。基板はグラファイとを用いた。また、スパッタ法はrfマグネトロンスパッタ法を用いた。スパッタガスはアルゴンであった。Irは2453℃の融点を持つため、基板温度を室温、800℃に保ったとき、融点で規格化した各々の温度(T/Tm)は0.1および0.4となる。 その結果、 1)成長後の破断面のSEMによると、いずれの基板温度でも成長組織は柱状に成長しており、一本の柱の径はほぼ500nmで基板温度には依存しないように見えた。 2)高分解能電子顕微鏡観察の結果、基板温度がT/Tm=0.1のとき、結晶粒径はそれより一桁小さい30〜50nmであることがわかった。結晶粒界はカーブしておりエネルギー的に安定な配列はとっていないことがわかる。また結晶粒界、および粒内に直径0.5〜0.7nmの大きさを持つボイドが多数観察された。これはスパッタ中にアルゴンガスが膜中に取り込まれたものと考えられる。破断面で観察された柱径は、基板表面の凹凸によるシャドウウイングの効果のためと考えられ、実際この系で密度の小さい場所が観察された。 3)基板温度がT/Tm=0.4の場合には、結晶粒界は破断面でSEM観察した結果の500nmと電子顕微鏡による観察と一致した。基板温度がT/Tm=0.1のときと同様、ボイドが観察された。 4)この柱状組織は安定で、1700℃の熱処理でも変化がなかった。 さらに基板温度、熱処理にともなう結晶粒界の性格について継続して研究を行っている。
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