本年度は研究の初年度として、以下の点について検討を行った。 (1)Ti-Si2元系合金のアーク溶解とその組織と組成 まず、融点の異なる2種の純金属を溶解した場合の、目的組成からのずれについて検討を行った。所定の組成(Ti-20-40mol%Si)となるように計量した素材6gを裏返しつつ4回溶解した。単相材(Ti_5Si_3組成)の場合、溶解材断面のEDS分析を行ったところ、Ti-38.6(+0.5-0.4)mol%Siの分析結果が得られた。従って、4回の溶解により素成分の混合は十分に行われてたと考えられる。また、いずれの組成においても1mol%程度のTi成分の減少が認められた。 Si量の減少に伴って溶解材の中央部に認められる粗大なTi_5Si_3初晶のみから成る領域が減少する。これは、状態図において固相線と液相線との間の温度範囲の減少と一致していた。 (2)Ti-Si-V3元系合金溶解材の組織と平衡する相との関係 本年度は、Tiを主成分として、Siを30〜37.5mol%、Vを0〜25mol%の範囲で添加し、アーク溶解した。 まず、Si量を37.5mol%と一定とし、Vを20mol%まで添加しても溶解材はTi_5Si_3単相であった。すなわち、Vは多量に添加してもTi_5Si_3に固溶(Tiサイトに置換)し、D8_8の結晶構造を保持する。したがって、Ti_5Si_3と固溶体(Ti_<SS>)とを共存させるためにはSi量を減少させる必要がある。例えば、Ti-30mol%Si-25mol%V組成の溶解材の場合、Ti_5Si_3初晶の平均組成はTi-39.5mol%Si-15.5mol%V、平衡する固溶体相はTi-7.3mol%Si-53.4mol%Vであった。この固溶体相はその組成からβ-Tiであると考えている。また、Vの添加により共晶あるいは共析組織を形成するTi_5Si_3のアスペクト比の減少も認められた。
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