Ti_5Si_3は低比重、高融点、良好な耐酸化性を有しているが、複雑な結晶構造ゆえに極めて脆く、溶解材では冷却中の熱応力で多数のクラックが生ずる。そこで、このTi_5Si_3本来の優れた性能を生かしつつ、延性を改善するために軟質な第2相を素材中へ生成させる方法に注目した。 Ti-Si2元系合金では、Ti_5Si_3と第2相を全ての温度域で共存させることは不可能である。そこで、第3元素として、β安定化元素のVとMoを用いて、(Ti_5Si_3+β-Ti)2相材を作製するための化学組成を明らかにし、さらに得られた溶解材の特性について検討することを本研究の目的とした。 VとMOを添加してアーク溶解したままと均一化熱処理を施した材料について、相の同定と定量分析を行った。Vを添加した場合、5mol%の添加において(Ti_5Si_3+β-Ti)2相材が得られたが、1473K-86.4ksの均一化熱処理によって、β相からα相が析出した。以上から、β相を室温で安定化するためには10mol%のVが必要であることせう明らかになった。また、約20mol%VまでD8_8相に固溶し、破壊靭性値は無添加材の1.17から1.85MPa・m1/2まで大幅に向上させることができた。 5mol%のMo添加によって、β-Tiを室温で安定化できた。Moの添加によって、共晶組織の球状化、微細化がもたらされた。また、初晶のアスペクト比が減少し、クラックの発生を抑止することが可能であった。組織の微細化をもたらすことからMoの添加は有効である。しかしながら、溶解ままの試料を均一化熱処理したところ、D8_8相がβ相との反応によって組成の異なる2つのD8_8相に分解した。すなわち、Ti_5Si_3へのMoの固溶は従来言われているように、20mol%を越えるものではなく、本研究で得られた約14mol%が限界であることを示している。さらにV、Mo添加材の(Ti_5Si_3+Ti固溶体)2相領域の室温での等温断面図を作製することができた。
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