研究概要 |
平成7年度科研費、課題番号07831001の「青銅製埋蔵文化財の保存科学的研究」を継続する形で、各種保存処理の青銅製品の表面錆層および地金への影響について調査した。 今回実験した保存処理方法は、蟻酸法、STPP(Sodium Tripolyphosphate)法、EDTA(Ethylene Diamine Tetracetic Acid)法、ケイ酸ナトリウム法の4種類で、青銅製品の防食強化という基本的保存処理ではなく、研究、展示といった文化財の活用のため表面錆除去を目的としたものである。したがって、保存科学的には青銅器への化学的影響の危惧から、その実施の是非が問われるべきものである。 本実験では、未処理の試料と、各種処理を施した試料の断面について、EPMAによるスキャニング測定を行い、錆層から地金にかけてのCu,Sn,Pb,Znの濃度変化を比較した。 結果、炭酸銅系の錆の溶解に優れる、蟻酸法、EDTA法において、地金表面侵食がわずかであるが認められた。しかし、今回の実験では、ある程度の厚さの均一な錆を持った試料を使用できなかったので、処理剤の地金への影響について明確に述べるための分析データを得るに至らなかった。製作時表面と表面錆除去との問題も含め、今後更に実験を続けて行きたい。
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