研究概要 |
1.超硬合金の酸化現象 電気炉を用いて超硬合金を高温に加熱し,その酸化現象を巨視的に観察した.その結果,酸化物は,試料各面の法線方向にほぼ均一に成長し,母材との剥離性に優れ,ワイヤブラシのようなもので摩擦することにより簡単に除去できる.次にSEMにより酸化層を微視的に観察し,酸化層には多数の空孔が見られ,多孔質の構造であることがわかった.大気中の酸素は多孔質の酸化層を容易に通過して,酸化層と母材との不連続面に達し,酸素の供給を受けたこの不連続面がさらに酸化していく.酸化物は柱状で短く,互いに積み重なるように生成して多孔質酸化層を形成する.しかしながら,この多孔質の酸化物は,約800〜1000℃の温度範囲で生成し,1000℃以上の高温では,WO_3を主成分とする皮膜状の酸化物が生成し,WA砥粒を用いた研磨作業によっても,その酸化物の完全な除去は難しいことがわかった. 2.X線回折による酸化物の同定 X線回折により,コバルト酸化物,タングステン酸化物および複合酸化物の回折線を同定することができた.コバルト酸化物はCo_3O_4とCoOの2種類であり,Co_2O_3は存在しない.酸化された表面が灰緑色を呈するのはCo_3O_4とCoO酸化物によるものと考えてよい.次に,タングステン酸化物は黄色のWO_3のみであり,相対強度が低いことと表面に黄色の物質がほとんど存在しないことの2つの理由から,その生成量は少ないことがわかった.いずれの酸化物についても,回折線のピーク位置は各物質の格子定数から計算したものとよく一致していた.
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