研究概要 |
平成6,7年度科研費研究課題「溶射粒子の偏平凝固過程における支配因子の解明」に引き続き、溶射粒子の偏平凝固過程の解明に取り組んだ。 初年度である本年は、1)粒子偏平に対する基材因子として、基材熱伝導率および粒子/基材界面での動的ぬれ性の影響解明、2)粒子偏平・凝固挙動のその場観察-模擬実験、に着手した。 初めに、粒子/基材界面ぬれ性の一定条件の下に粒子偏平・凝固挙動に及ぼす基材熱伝導率の影響を調査するために、金蒸着膜を形成した各種基材上でのNi粒子の偏平挙動を比較した。その結果、基材熱伝導率の大きい場合ほどスプラッシュ状からディスク状への偏平形態の遷移する遷移温度が上昇することから、粒子偏平に対し衝突時初期凝固が大きく影響するとのこれまでの知見を裏付けた。 次に、基材熱伝導率一定の下に粒子/基材界面ぬれ性の影響を調査するために、SUS基材上に各種金属材料蒸着膜を形成した基材を準備し、同じくNi粒子の偏平挙動を比較した。その結果、膜金属の活性な場合ほど、遷移温度が高い傾向が認められた。加熱後の膜に対するオージェ分析の結果、膜表面は酸化されていたことから、この場合は、活性な金属ほど酸化されやすく、そのためにNiとのぬれ性が悪く、遷移温度が上昇したと考えられた。従って、粒子偏平に対し、動的ぬれ性の影響は無視できないことを明らかにした。 今回導入した高周波誘導加熱装置により溶融させた自然落下粒子による模擬実験を行い、粒子衝突後の偏平・凝固過程の、高速ビデオによるその場観察を行った。その結果、基材とのぬれ性の悪い場合には粒子は急速な薄い層状流れとして広がりスプラッシュを形成すること、などの興味深い数々の知見が得られた。現在、本実験を続行中である。
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