研究概要 |
本実験の目的はMA法を用いて硬磁性材料と軟磁性材料とから成る強力な永久磁石材料を作製することにある.硬磁性材料と軟磁性材料とを結晶粒径が20〜30nmでカップリングさせることができれば両磁性体間に磁気的結合が働き,あたかも1つの永久磁石のような働きをし,硬磁性材料の大きな保磁力と軟磁性材料の大きな磁化の強さの双方を具備したものが得られる可能性があることが理論的に指摘されている.これまでの研究はいずれもNd-Fe-B系内,あるいはSm-Fe-N系内といった一つの系内での試みである.本実験では,MA法が固相反応であるという特徴を活用して,硬磁性材料と軟磁性材料を別個に選んだMA法を試みることにし,まず,硬磁性材料として(Sm-Co)系を軟磁性材料として純Feを使用することにした.得られた結果を要約すると,以下のようになる. (1) SmCo_5+Fe混合粉末を,真空中で108ksのMA後,873〜973Kの温度で熱処理を施すことにより,微細な結晶粒を有する粉末を作製できることが確かめられた.しかし,熱処理温度がこれより高くなると,2-17相の成長により磁気的特性が低下することが明らかになった.いずれの組成においても873〜973Kといった比較的低い温度での熱処理後に優れた特性が得られた. (2) Fe濃度を変えることにより,種々のタイプの特性を持つハード磁性材料が得られることが確かめられた.本研究では,Fe濃度がl5at%及び30at%で,優れた特性が得られた. (3) 873〜973Kの熱処理後に得られた高い残留磁化は,X線回折図形およびVSMの結果からα-Feによる効果と考えれる.また,このα-Fe相とハード相との間に交換相互作用が働いた結果,優れた磁気特性が得られたものと考えられる.
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