研究概要 |
本研究室における永年の研究成果を基に選定したTi-4mass%Cr合金は、市販の安価なチタン粉末(-350mesh)とクロム粉末(-350mesh)を単純に混合・圧粉成形したのち1250℃で1時間真空焼結するという簡単な方法で容易に製造できる.しかも,本合金は,約900℃以上の高温域では原子の拡散性に優れたBCC構造のβ相となるため、1250℃で1時間の真空焼結を行なうだけで相対密度にして92%まで緻密化し,焼結ままの状態で900MPa程度の高い強度を有しながら約10%の伸びを示す.しかし,残存する気孔のために,破壊靱性や疲労特性などの面で比較すると現用のチタン合金よりはるかに劣ることが判明した。これらの機械的諸特性を改善するには、残存気孔を少なくとも1vol%以下になるまで下げる必要があり,高温域では軟らかく加工性に富むというβ相特有の性質を利用して,焼結体の高温鍛造を行った結果,目的とする形態に加工すると同時にほぼ完全に緻密化出来ることもわかった.しかも,焼結体に残存する気孔は,真空焼結の過程ですべて閉気孔となっているため,加工中に内部酸化が起こることもなく,溶製材と同様な健全チタン材料が得られることも確認した。また,本合金は、高温からの冷却中に700℃以下に低い温度でβ相からHCP構造のα相が析出して強化が起こることも知られており,変形中に導入された転位の影響で内部組織が微細化されるという利点があることも確認した.
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