絶縁体中に誘電体を組み込んだ積層セラミックス基板における異種物質間の接合特性を明らかにするために、本年度は特に誘電体と絶縁体の反応を調べた。誘電体としてPb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3、Pb(Mg_<1/2>W_<1/2>)O_3およびPb(Fe_<2/3>W_<1/3>)O_3を用い、絶縁体としてPbO-SiO_2系、PbO-B_2O_3系およびPbO-B_2O_3-SiO_2系ガラスを用いた。反応を調べるために、誘電体の焼結体を作製し、その上にガラスフリットをのせ、700℃でいろいろな時間加熱した。界面付近の微細構造をSEM、EDS、EPMAで観察し、反応生成物をXRDで同定した。 いずれの誘電体を用いた場合にも、PbO-SiO_2系ガラスの場合にはPbO含有量が40モル%のときには顕著な反応が認められないが、60モル%のときには誘電体成分がガラス中に溶解し、誘電体-ガラス界面に反応層が生成した。例えば、Pb(Mg_<1/3>Nb_<2/3>)O_3の場合、界面に層状にPb_8Mg(Si_2O_7)_3が生成した。一方、PbO-B_2O_3系ガラスを用いた場合には、PbOの含有量にかかわらずガラスが誘電体中に侵透し、誘電体と反応して反応層を形成した誘電体とガラスの相対的な量やガラスの組成が侵透深さにより異なるため、数種の反応層が認められた。例えば、Pb(Mg_<1/2>W_<1/2>)O_3の場合、界面から誘電体側に入るに従い、3種類の反応層が形成した。それらは、数種の反応生成物から形成されている。PbO-B_2O_3-SiO_2系ガラスを用いた場合には、PbO-B_2O_3系ガラスの場合に類似した結果となった。以上のことから、誘電体とガラスは反応するが、PbO-SiO_2系ガラスの場合は誘電体がガラスに溶解し界面における微細構造は誘電体成分のガラスへの溶解度によって決まるのに対し、PbO-B_2O_3系およびPbO-B_2O_3-SiO_2系ガラスの場合には、ガラスが誘電体側へ侵透し、侵透速度や反応生成物は誘電体成分のガラスへの溶解度によって決まることが分かった。
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