研究概要 |
冷間の板材圧延加工は製品の表面仕上げに関する厳しい要求と高生産性を両立するためにトライボロジー状態の把握が非常に重要な分野である.しかしながら圧延ロールと板材が数百MPaの高圧で接触している加工界面での潤滑剤の挙動は,想像の域をでないことが多く,潤滑機構の微視的モデリングを進めるうえで大きな困難を抱えている. 本研究ではロール径150mmの2段圧延機を改造して,ロールに強化ガラスの受圧部とマクロレンズ,CCDカメラを埋め込むことにより接触界面の画像を取得可能とし,さらにスリップリングを介して外部に取り出すことにより,世界で初めて圧延界面の直接観察に成功した. 現在種々の圧延条件への適用ならびにレーザー顕微鏡を利用した圧延後の表面の微細形状解析を進めているところであるが,現在まで得られた研究成果として次のようなことがあげられる.板厚2mmの工業的純アルミニウムA1050P H24材を圧延速度10m/分,圧下率10%程度で,鉱油を潤滑とした場合接触弧の潤滑剤が混合潤滑的に引き込まれる状況が動的に観察される.すなわち圧延前の板材の微細表面形状の谷部分への機械的捕捉,ならびに動的くさび効果による引き込みにより界面に持ち込まれた潤滑剤は加工部で加圧され,ロールバイト出口部分での減圧とともに噴出する.そのとき条件により固化した潤滑剤の樹枝状の構造が受圧ガラス面上に観察され,これは数秒から数十秒の間に再度液状化する.このような動的挙動は従来報告されておらず,圧延潤滑機構のモデリングのうえで重要な情報を与えると考えられる.
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