鉄鋼の凝固中、初晶δ相と未凝固融液が包晶反応を起こし、両者の界面にγ相が生成する。このγ相は、液相からγ相を通ってδ相と流れる炭素の拡散により、液相側とδ相側に成長する。δ相は樹技状晶(デンドライト)形態の凝固組織を有するが、包晶反応後のγ相は亀甲状の結晶粒組織になる。このγ相組織は鉄鋼の製造中および製造後の諸性質に強く影響するので、この組織をいかに制御するかという問題は実用上きわめて重要である。それゆえ、本研究ではγ結晶粒組織の形成過程を調査した。以下に、研究結果をまとめる。 γ結晶粒の形状と大きさは、冷却条件の影響を強く受ける。冷却速度が小さいとき、鋳片内の温度勾配も小さくなり、γ粒は大きく等軸的になる。一方、冷却速度が大きいとき、鋳片内の温度勾配も大きくなり、γ粒は柱状的になる。このとき、柱状γ粒の幅は前記の等軸粒の直径と比べて小さくなるが、その長さは等軸粒の直径より長くなる。いずれの冷却速度の場合においても、1つのγ粒の中には多数のデンドライトが含まれており、また粒界柱状γ粒組織が形成する。このとき、1つのγ粒の中にはいくつかのδ結晶粒が含まれ、両相の結晶粒界は無関係である。これらの結果から、包晶反応過程について、以下のように考察できる。 包晶反応はδデンドライトと液相の界面で始まるが、反応前線はデンドライト間の境界をいくつも越えて移動する。反応前線の移動速度は、温度勾配の方向に速い。
|