鉄、亜鉛、錫、鉛、コバルト、ニッケル、砒素、アンチモン、ビスマスの不純物を含む銅スクラップを坩堝で溶解した後、FeO_x-SiO_2-CaO-Cu_2O系スラグを添加しつつ、溶銅中にアルミナ管で空気を吹き込む不純物を酸化させる実験を行った。前記の不純物のうち、鉄、亜鉛、錫、コバルトの大部分はこの方法で大部分酸化除去出来ることが明らかになった。鉛とニッケルは酸化精製により幾分除去出来るが、完全に分離するまでには至らなかった。砒素は酸素ポテンシャルを上げ、Cu_2O-CaO系スラグを添加すると除去出来た。スラグに入った砒素の大部分は固体の3CaO・As_2O_5の形態とみられる。アンチモンも塩基性のCu_2O-CaO系スラグを添加することにより幾分除去できる。ビスマスはいずれのスラグを用いても、酸化除去出来なかった。 前記の不純物元素の熱力学的性質、及びスラグと溶銅間の分配平衡データから次のことが指摘できる。 1.不純物の酸化物の融点が銅の融点より高い鉄、亜鉛、コバルト、ニッケルは、溶剤を添加しない酸化だけで、これらの不純物を固体酸化物として除去分離出来る。 2.酸化精製温度は低い程よい。それはこれらの不純物と酸素の親和力が銅と酸素との親和力より大きく、酸素との親和力が大きい金属ほど低温で酸化されやすい為である。 3.酸素との親和力の大きい不純物である亜鉛、鉄、コバルト、錫を酸化除去する際、過剰に酸化し過ぎると、銅中の酸素濃度の増加のため不純物元素が銅中で安定になり除去し難くなる
|