研究概要 |
電気化学的水晶振動子マイクロバランス(EQCM)法により,金属電極表面の反応機構について検討した。結果は以下の4つに分けられる。 (1)Ni電極およびNi-Zn合金中のZnを浸出したNiポーラス電極のサイクリックポルタモグラムをpH12KOH水溶液中で行った。両電極とも電位及び電流値に違いがみられたが,CVの形状は同じであった。また,サイクル数の増加とともに両電極とも重量増加がみられ,基板上に活物質が増加していった。しかし,ポーラスNi電極では,Ni電極にみられない質量の増加-減少電位部がみられた。このことが,ポーラスNi電極がNi電極よりも高活性化する理由の1つではないかと思われる。 (2)酸性硫酸浴中からのCuInX_2(X=Se,Te)半導体化合物の電析中のカルコゲンの還元挙動について検討した。Se,Teの還元挙動は,反応電位に違いがみられるものの,同じメカニズムで還元挙動がみられた。まず,X単体元素として0価に還元析出した後,さらに-2価にまで還元され,析出物が溶出した。CuInX_2(X=Se,Te)半導体化合物の電析中の挙動は,Cu-X合金が析出した後に合金中のXがX^<2->として溶出した。その後,InとX^<2->が反応してIn-X合金が生成し,最終的にCuInX_2化合物が電析する事がわかった。 (3)青化法によらない新しい金のリーチング法として,アルカリチオ尿素溶液中からの金の溶出法について検討した。その結果,亜硫酸を添加することによって溶出能が向上することがわかった。アノード電位が高すぎるとチオ尿素が酸化されてしまうため,有効な電位が存在することがわかった。 (4)腐食抑制剤のZn/PO_4^<3->系カソードインヒビターの金属上への吸着・成膜挙動について調べた。EQCMから得られる重量変化を用いて皮膜厚さを求めたところ数十nmであり,AFM観察により,皮膜は均一に表面に形成していた。カソード分極下において吸着・成膜現象が急速に生じる場合と緩やかに生じる場合がみられた。
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