研究概要 |
無容器処理法は、通常の溶解・凝固法とは異なり、容器を必要とせず非接触下で試料を処理できる新たなプロセスとして着目されている。特に、上記新たなプロセスを地上で実施する場合、物質重量をキャンセルするために莫大なエネルギーを必要とするが、無重量環境となる宇宙,すなわち微小重力環境においては上記プロセスが極めて容易に実現出来ることが期待されることから、本プロセスは2003年稼働開始が予定されている国際宇宙ステーション・アルファ搭載用日本実験モジュール(JEM)における代表的材料科学実験用装置として装置開発は勿論のこと、独創的なる研究課題の提示に期待が持たれている。しかし、現状内外共に未踏研究領域となっており、高純度材料生成を目的とした僅かな実験実施例のみが報告され、さらに本プロセスを実現する装置開発を含めた基板技術確立は勿論、浮遊試料の安定浮遊保持の実現にも大きな問題を有している。申請者は、本申請研究実施期間に電磁力を浮遊試料の保持媒体とし、種々の金属材料を用いた航空機による短時間微小重力実験を行い、1秒以内での浮遊試料の完全安定保持に成功を収め、さらに低融点金属を用いた浮遊溶媒の実現と溶融試料の安定保持に対し内外共に全くない大きな成果を示した。また、Nd-Fe2元合金試料の無容器凝固実験に成功を収め、さらに申請者が独自に提示・確立した半導体フォトダイオードを検出素子に用いた0.5ms時間分解能をもつ非接触二波長放射温度計により、試料の無容器凝固過程の計測を実現させ、さらに申請者の独自の視点に基づいて、上記航空機実験で無容器凝固させた試料の構造・磁気物性の解析から、電磁浮遊炉を用いた金属基合金試料の無容器処理法による強磁性非平衡相晶出に対する微小重力環境の効果を明確に示し、本申請研究課題の目的全てに対し明確かつ定量的成果を示したものと考える。
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