自動車などのバイタルパーツとなる素形材部品の製造は労働集約型であるという理由だけでリストラ、海外移転の対象となりやすく、今までの技術蓄積が消滅してしまう危機感さえ感じられる。本研究の目的は、素形材の生産設計に的を絞り、高機能知識データベースの開発を行うことである。今年度は、合理的な生産設計および技術ノウハウの伝承を可能とするために、多様なデータを手軽に一元管理し、共有できる生産準備業務用マルチメディア・データベースシステムの開発を試みた。すなわち、まず、生産準備支援情報システムの用件として、(1)作図作業の効率化が実現できること、(2)関連した情報が一元管理された状態にあり、瞬時に登録・検索が行えて、再利用も可能であること、(3)生産設計の根拠や背景情報が蓄積され、利用されること、(4)操作が容易であること、(5)組織内での情報共有が可能で、相互啓発に寄与できること、(6)コストパフォーマンスに優れていることが挙げられた。それを受けて、データモデルの枠組みを検討し、プロトタイプのデータベースを構築した。そこでは、エンティティとして、製品基本情報、コスト情報、生産(方案)設計情報、受注情報、顧客情報、関連協力企業情報を扱うことにした。また、属性として、品番、品名、材質など数値やテキストで表現されるデータ以外に、製品図面、型(方案)図面、設備図面、製品外観写真、不具合部位の写真、生産(方案)設計標準の各表・グラフ、技術計算式、メモデータを扱っている。また、一般に普及している表計算ソフトウェアを用いてデシジョンテーブルの入力/編集が可能で、ルールが自動的に生成される知識ベース機能を開発した。また、グラフの電子化や背景情報の付加など、必要な機能について新たに開発した。今後、背景情報の蓄積/利用とそれをもとにした知識ベースの構築に関する要素技術の研究を進めていく。
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