一般的に生産準備業務は非定型業務であり、担当者の固有技術に依存するところが多い。ここでは、情報の共有が自然な形で起こり、重要な情報については伝承される方法論を研究し、その有効性について検討してきた。とくに注目したのが、形式情報と暗黙情報を区別し、暗黙情報を形式情報に変えるためのナレッジマネジメントツールの開発である。本年度は、業務の形態を記述できる活動モデルについて検討し、テキスト、数値、画像、CADなどの形式的なマルチメディア情報とそれぞれの意思決定の背景にある情報を関連づける方法論を検討した。活動モデルは生産活動全体のモデルであり、作業手順や担当者、交渉、環境、意思決定背景など様々な要素を含む。ここでは、階層型の作業モデルと各作業レベルで決定すべき項目(形状、作業条件、仕様など)、さらに各項目と関係付けられた背景情報という3つの要素を組み合わせた実装可能な活動モデルを考え、3つの要素は、自由に登録、変更が可能で、相互関係をダイナミックに構築したり、修正したりできることが重要である。これらを考慮したプロトタイプシステムを開発した。この活動モデルはマルチメディアデータベースとリンクされ、操作内容はすべてログ情報として蓄積される。情報が蓄積され、品質結果と照合されれば、たとえば生産設計標準を改訂し収斂していくことも可能である。本研究の成果に基づき、産学共同プロジェクトで具体的な実務システムが開発され、20以上の企業においてとくに素形材の生産準備において適用されるに至っている。
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