一般事務業務や製造業での生産準備業務(原価計算、工程設計、型および治工具などの図面作成)などの企業内間接業務においては、担当者の関与する情報の限度内で意志決定が行われることが多い。従来、間接業務に対して知識を体系化したのち知識データを入出力できる枠組みおよび意志決定に関わる種々のデータ群(様々な帳票、製品の現物写真、図面、現場での不具合情報など)を統括管理できるデータベースシステムに関する研究がDSS(Decision Support System)、知識ベースシステムのフレームワークを中心に進められてきた。しかし、実用レベルに達したシステムは少ない。 本研究では、素形材の生産設計に的を絞った高機能知識データベースの開発を行った。自動車などのバイタルパーツとなる素形材部品の製造は労働集約型であるという理由だけでリストラ、海外移転の対象となりやすく、技術伝承がおきざりにされ今までの技術蓄積が消滅してしまう危機感がある。本研究の目的は、製品図面を受けてから量産にいたるまでの素形材の生産設計に関する知識を体系化しデジタル化できる方法論と画像、音声などのマルチメディアを取り扱える高機能知識データベースの開発を行うことである。これは、専門家なみの知識を入れて新人教育用に開発された従来のエキスパートシステムなどとは異なり、むしろ専門家が自らのために使えるもの、すなわち、人間の能力開発の支援になるデータベースの構築を目指したものである。最終的に、間接業務に関わる背景情報(決定根拠、環境、過去のデータなど)をデータベースに自然に蓄積しながら、それを次の意志決定に反映できる意志決定支援システムのフレームワークを行い、プロトタイプを開発した。
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