研究概要 |
平成8年度の研究実績および知見に基づき,もっとも紡糸性に優れると考えられるCu_<90>Be_<10>at%合金を用いて,磁場中での紡糸実験を行い,SEM(走査型電子顕微鏡)で凝固組織を観察し,急冷促進効果を調べた. 石英ガラス製ノズル直径を0.1mm,噴射圧力を0.35MPa,ドラム回転数を5s^1,冷却液体(KC15mass%水溶液)温度を288K,溶融合金ジェット入射角度を1.05radとしたほぼ同一紡糸条件下で,ジェットを回転液層深く進入させる方向に電磁気力を作用させた.電磁気力を通電電流値で変化させ,凝固組織変化を調べた. 急冷凝固Cu-Be合金細線は,電磁気力の有無にかかわらず,デンドライト凝固組織であり,本紡糸条件下ではアモルファス細線は得られなかった. 電磁気力を作用させないときのデンドライト2次アーム間隔は0.82〜0.99μmであり,100mA〜1Aの電流を通電して電磁気力を作用させた場合では0.75〜0.90μmに減少した.デンドライト2次アーム間隔が平均冷却速度の1/3乗に逆比例するという経験則から,冷却速度は最大2倍程度増大しているものと推定された.ただし,1Aの通電ではジュール熱の発生量が多く,急冷促進効果は得られなかった. 磁石と噴射ノズル位置関係を変化させ,磁場の強度による急冷促進効果をシミュレートした.磁気回路外での漏れ磁束により,ノズル出口よりジェットに電磁気力が作用し,磁場の強度増大に伴い液層へのジェット入射角が増大するものの,液層流れに対するジェットの傾斜に顕著な差ができず,冷却速度は最大10%程度増大したにとどまった. 回転液層内ではドラム回転数の増大に伴い,ドラム底から液層表面に向かう2次流れが顕著になり,この2次流れが液層中のジェットの揺らぎと密接な関係があるものと考えられた.
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