物質としての炭素は、活性炭として或いはゴムの補強剤であるカーボンブラック等として、極めて有意義な物質である。そこで、著者らは昨今話題となっている古紙に目を向け、綿状にした古紙を乾留炭化させ、賦活を行ったところ、その炭化物は市販の活性炭の75%以上の活性度を示すことを見いだした。しかし、綿状古紙から活性炭を製造するためには、乾留過程にある綿状古紙の熱拡散率、熱伝導率及び比熱等と言った諸熱物性値を知って、適切な装置を設計・製作することが必要である。 本研究では、未だ未知の乾留過程、即ち昇温過程にある綿状古紙の熱拡散率の測定法を確率し、その実測値を得ることを目的とした。 測定は、外壁より連続加熱した半無限円筒容器に試料物質を詰め行った。具体的には、実測された初期及び境界条件を用いて、円筒状の試料層に対して導かれる非定常一次元熱伝導方程式を差分法により解き、試行錯誤的に熱拡散率を決定する方法を採用した。なお、本測定法の妥当性については、数値実験を行い、充分なる検討を行った。 実験の結果によれば、昇温過程にある綿状古紙は収縮を伴うが、その収縮率は、300°付近より急激に増加し、450°付近を境にして一定値に近づくこと、また見かけ密度も同様に、300〜350°Cの間で急激に減少するが、500°Cを越えた付近からは殆ど変化しないこと等が分かった。 一方、熱拡散率に関しては、300°C付近までは緩やかに増加するものの、300°Cを越えると綿状古紙は発熱分解反応を起こすため急激に増加し、330〜400°C付近で最大値を示した後、急激な減少に転じ、やがて各条件下で各々一定値に収斂することが分かった。
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