研究概要 |
本研究は一度汚染された鳴き砂の復元を目的に,石英砂表面の洗浄の機構を解明し,より効率の良い鳴き砂の量産プロセスの基本設計をすることにある。石英砂に発音特性を発現させるための洗浄方法は種々考えられるが,洗浄後の処理のしやすさ等を考慮し,本研究ではまず水平旋回運動機構を有する回分式の洗浄機を用いて,水による洗浄実験を行った。実験は水に対する石英砂の濃度および水の交換回数を変化させて行い,洗浄時間と石英砂の発音特性の関係等を検討した。また,同時に石英砂に付着している微粒子のキャラクタリゼーションも行った。得られた主な結果は次の通りである。1)洗浄時間の経過と共に,石英砂は発音特性を示すようになり,およそ144時間で鳴き砂の発音を呈する様になる。その時の周波数スペクトルは1〜3kHzに顕著なピークが現れる。2)洗浄効果に対する石英砂の濃度には最適値(40〜60wt%)が存在する。3)水の交換回数は1日1〜2回程度が最も効率的である。3)洗浄時間の短縮法として,陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム5mmol/L程度の添加が極めて有効である。4)X線分析および粒度分析結果,洗浄によって脱離する微粒子のほとんどが0.2〜100μmの範囲の粘土粒子であるが,24時間程度の洗浄では比較的粒径の大きい40μmの粒子が脱離し,96〜192時間で粒径1μmの粒子が脱離する。5)本実験装置内のスラリーの混合状態を観察した結果,粉体層下部にいくに従って混合速度が遅く,容器全体の混合が達成されるのは,184rpmの回転数では約3時間後であった。今後,回転数の影響を調査し,最も効果的な洗浄作用を与えるスラリーの運動方式を検討することで,大型の洗浄機の基本設計が十分可能となるものと思われる。
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