本年度は臨界点近傍における溶質-溶媒間相互作用を明らかにするため、FTIRを用いて溶媒にCO_2、溶質にアセトンを用いて温度、圧力、アセトン濃度を変化させ、溶媒-溶質間の相互作用に及ぼす影響を調べた。吸収ピーク強度に異常性が認められたのは1725cm^<-1>のC=0伸縮振動ピークのみで、他については全く認められなかった。条件によって1725cm^<-1>付近にいくつか新たなピークが現れるので、バンド分解を行い、各波数における吸収ピーク面積をピーク強度とした。1725cm^<-1>の吸収ピーク強度はアセトン濃度に比例して増加するが、ある条件下では予測値よりも過剰な値を示す。これは超臨界CO_2中でアセトンの溶質-溶質間相互作用(溶質同士がクラスターを形成)と考えられる。一方、1722と1719cm^<-1>の吸収ピークは臨界点近傍のみ現れる。これはC=0伸縮振動吸収に起因するのが溶質のアセトン分子の回りにCO_2分子が会合し、そのため伸縮運動が制限され低波数側にピークがシフトしたと考えられる。これらのピークが存在する条件は極めて狭い条件であり、溶質分子の回りに溶媒分子のクラスターが形成するのはほんの臨界点近傍に限られることがわかった。 物質移動パラメターの測定として、本年度はガラス球(細孔なし)を充填した充填層における超臨界条件下での軸方向分散係数D_<ax>を圧力と粒子径を変化させ、また上昇流と下降流についてクロマト法を用いて測定した。また、Taylor法により超臨界CO_2のベンゼンの分子拡散係数を測定した。
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