研究概要 |
本研究では、噴霧熱分解法を用いて蛍光物質、液晶の材料、CO_2ガスなどの光還元触媒用の機能性材料として注目されるZnS、CdSなどの金属硫化物の半導体微粒子の製造を例にとる。噴霧熱分解法により製造されるZnS、CdSの微粒子の性状および形態が、(1)噴霧液滴のサイズ、(2)噴霧溶液のプリカーサ(溶質)濃度、(3)液滴の加熱速度および加熱時間、(4)ガス流速などによりどのように変化するかを、微粒子の製造実験により検討した。 ZnS, CdSなどの金属硫化物の組成のプリカーサを含む溶液を調整し、これを噴霧装置より霧化させ、生成された液滴を適当な温度に設定した管状の電気炉に導入し、出口に捕集した。X線回折およびSEM/TEM解析の結果によると、生成したZnSおよびCdSの微粒子は、ほとんど同じプリカーサでありながら、ZnS粒子は表面がなめらかな球形粒子となるのに対して、CdS粒子の場合はポーラスでナノメーターオーダーの一次粒子からなる凝集体という興味深い結果を得た。また、噴霧する原料溶液濃度を変化させることによって、生成粒子の粒径が制御することができた。これによって、生成粒子の微小化が得られるが、生成速度が低下するという困難を伴う。 そこで、現在の噴霧熱分解法の研究において一般的な噴霧方法である超音波噴霧法や加圧または二流体ノズルに比べてより微小な液滴の発生が可能である静電気力を利用する静電噴霧法に注目した。静電噴霧熱分解法により、ZnS, CdS微粒子の製造を試み、生成微粒子の特性を調べ、粒子径および粒子形状などについて従来利用してき超音波噴霧熱分解法により生成した粒子との比較を行った。超音波噴霧法で発生する液滴径が4〜5μm程度となっているが、静電噴霧法を用いることで1μm以下の液滴が発生していることがわかった。これによって、同じ噴霧溶液濃度において、超音波噴霧熱分解法で得られた凝集粒子の径より、静電噴霧熱分解法で得られた凝集粒子の径が、一桁も小さくなっている。また、10nm程度の超微粒子も生成されているので、今後操作条件を検討すればこの大きさの超微粒子がより多量に得られることが期待される。
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