研究概要 |
回転円筒座標系に変換した3次元Navier-Stokes式と連続の式に基づいて、バッフルなしの撹拌槽内の流体運動の直接数値計算を行った。このとき慣性項には撹拌翼付近を除いて5次の風上差分法を、その他の空間微分項には2次の中央差分法を適用し、時間微分項には2次のルンゲ・タック法を適用した。羽根回転数はn=12.07rpm(水の場合),n=180.9rpm(空気の場合)とし、翼端速度と撹拌槽半径基準のレイノルズ数がRe=4500の条件で計算を行った。計算は静止状態から開始し、一定角度速度で撹拌翼を加速させて行った。計算メッシュ総数(内点)は124×56×372≒2.6×10^6で、本研究の場合、計算メッシュ寸法は流れ場の平均のKolmogorovのミクロスケールとほぼ等しくなる。時間ステップ幅は無次元で7.0×10^<-4>、有次元に換算すると1.4×10^<-3>s(水),9.4×10^<-5>s(空気)である。計算はFACOM・VP-2600を用いて行った。また各部の寸法および境界条件が数値計算と同一の撹拌槽の実験装置を製作し、作動流体に純水を使用して、蛍光塗粒による流れの可視化及びレーザードップラ流速計による流れ場の速度分布の測定を行い計算結果と比較検討した。計算により得られた流れ場の時間変化を瞬時の速度ベクトル線図及び等渦度線図によって表し、可視化実験結果と比較したところ、計算結果は撹拌翼の周辺で翼列間の流れが干渉して起こる複雑な流れ及び翼端から発生するtrailing vortices等が形成され、流れ場全体の流れが発達する過程をほぼ正しく表現することが明らかになった。また、本計算によって得られた流れ場合の各方向速度の平均値および乱れ強さの分布を求め実測値と比較した結果、いずれの場も計算値は実験値をよく表現することが明らかとなり、直接数値計算によって撹拌槽の流れ場の流れ特性を定量的にも予測可能であることを示した。
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