粉体を扱う各種の工業において粒子の高品質化、高機能化が進む中でより微小な粒子を利用する要求が高まっており、研究の対象もより微細な粒子へと移ってきている。このように粒径が小さくなるとさまざまなサイズ効果が生じることがわかっているが、気相中に分散した状態における粒子(エアロゾル粒子)の動力学的挙動については不明な点が多い。これは、気体としての性質が支配的な分子クラスターと固体あるいは液体としてのバルクな性質が支配的な超微粒子の区別がつかない領域では、高濃度で粒子を発生させることや精度良く測定することが非常に困難なためである。 本研究では、タンデムDMA(静電分級器)システムを用いてモビリティシフトを考慮した正確な粒子径を求めることにより、ナノメータサイズ粒子のワイヤスクリーンと層流円管内の透過特性および両極拡散荷電効率について測定し、気相中における超微粒子の動力学的挙動の解明についての基礎研究を行い、次の成果を得た。 まず、透過特性に関する実験からは、粒子の電荷は透過特性に影響を及ぼさない。また、Cheng-YehとGormley-Kennedyの既存の理論はStokes-Einsteinの式で粒径換算した2nmまで良く一致する。さらに、金属表面での跳ね返りはなく、金属表面に衝突した粒子はすべて沈着することを明らかにした。また、両極拡散荷電効率に関する実験からは、粒径が3nm以上では、イオンの電気移動度については実測値、質量については既往の文献値を用いることによりFuchsの理論とよく一致するが、3nm以下では理論より小さい値になることを明らかにした。
|