研究概要 |
本研究は、ワンステップの処理にてかつ高速で硫黄含有量の低い金属鉄を得るプロセスを提案するものであり,その設計に不可欠な速度データを得ようとするものである。とくに1996年度は,溶融状態を含む鉄鉱石の固体炭素による還元速度に関する基礎データを得ることを目的として,従来の研究の殆どがるつぼを用いて行われているのに対し,急速昇温が可能でかつ反応器壁への付着や固相への不純物混入の恐れが無く,そして生成ガスによる間接還元の影響が少ない粒子落下型反応器を用いて,高温気流中における炭素被覆鉄鉱石の還元挙動を追跡した。 炭素被覆鉄鉱石粒子は,鉄鉱石粒子とフェノールフタレインを混合し,773Kで乾留することにより調製した。窒素気流中,1340〜1860Kの温度範囲で炭素被覆鉄鉱石を加熱したところ,1650K以上で溶融が始まるとともに還元速度が増大し,鉄鉱石粒子中に金属鉄と二価および三価の鉄が共存する状態が観測された。1860Kでは,反応器内滞留時間0.5秒までに,全鉄量の53%が金属鉄まで還元されるという結果が得られた。処理温度や処理時間に伴う鉄形態の分析結果をもとに,体積反応モデルに基づき,Fe_2O_3(s)からFeO(s),FeO(s)からFe(s),そしてFeO(1)からFe(1)への各還元反応の速度パラメータを決定した。その結果,溶融酸化鉄の金属鉄までの還元反応速度は,るつぼを用いて測定された既往の文献値に比べ,10倍以上大きな値となった。
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