研究概要 |
本申請課題では,高選択的,高流束の不斉認識分離膜の開発を行うため,新規製膜法としてプラズマ重合反応を利用した乾式製膜法を検討し,得られた膜を用いてラセミ体アミノ酸の光学分割を行った結果,以下のような知見を得た. 1.膜に固定化する不斉源としては,天然光学活性体であるβ-シトロネロールを用い,プラズマ重合反応により酢酸セルロース多孔質基板膜への直接固定化を行った.プラズマ重合時間を変化させ固定化率の異なる膜を調製し,セラミ体アミノ酸の光学分割を行ったところ,重合時間30分の膜が,高い分離係数を示すことが分かった. 2.基板膜をアルゴンプラズマにより活性化した後に,モノマー溶液を導入し重合させるプラズマ開始重合により,酢酸セルロース多孔質基板膜にメタクリル酸グラフト重合した後に,エステル化反応により光学活性アルコールを膜中に固定化した.(-)-ノポール固定化膜を用いてラセミ体アミノ酸の光学分割を行ったところ,操作圧力の減少に伴う体積流束の減少により,分離係数は増加し,最大値125を得た. 3.拡散実験,収着実験,限外ろ過実験の結果をもとに,溶質透過流束の解析を行った.濃度勾配に基づく拡散流と圧力勾配に基づく体積流束に伴う粘性流の和として透過流束式を導出し,分離係数および溶質流束に及ぼす体積流束の効果を良く表現できることを示した.また,式中のパラメータを,膜に固定化した不斉源と溶質との相互作用に関するものと膜内物質移動に関するものに分けることができることを明らかとした.
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