研究概要 |
エネルギー源として石炭火力発電所の比重は今後増加すると予想されるが、石炭は種々の環境汚染物質を含んでいるので対策を充分立てておく必要がある。排煙脱硫装置から排出される廃水には高濃度のホウ素が含まれており、生育阻害を引き起こすため適切な除去が望まれるが、技術的にはまだ完成されていない。本研究では、溶媒抽出法によって選択的にホウ素を分離回収するプロセスの検討を行い、以下の結果を得た。 1.ホウ素の抽出および逆抽出挙動の解析 抽出率,選択性,安定性の点から、抽出剤として2-ブチル-2 エチル-1,3-プロパンジオール(BEPD),溶媒として2-エチルヘキサノール(EHA)が最適と考えた。回分抽出平衡実験により有機相中のBEPD濃度2kmol/m^3以上で抽出率はほぼ一定であったが、相分離の点から1kmol/m^3が最適と考えた。水相中初期ホウ素濃度の影響を調べた結果、濃度が低い場合でも75%の抽出率が得らた。逆抽出においては、回収相のNaOH濃度0.5kmol/m^3まではアルカリ濃度の増加に伴い逆抽出率が増加した。 2.ミキサ-・セトラ-型抽出システムを用いた連続操作 抽出平衡実験により得られた知見に基づき,有機相として1kmol/m^3のBEPD/EHA溶液を,回収相として0.5kmol/m^3NaOHを用い,2組のミキサ-・セトラ-による連続操作を行った。90時間にわたる連続操作の間,ホウ素を安定して回収することが可能であった。操作開始時の抽出率は約80%であったが,90時間後には約65%まで低下した。これは、抽出剤BEPDが有機相から抽残相や回収相へ溶解したことにより生じており、処理水の二次汚染を避ける操作が必要であった。 3.溶解した有機溶媒を用いた脱窒操作 ホウ素の抽出回収の際に水相へ溶解したEHA及びBEPDを有効に利用するため,脱硫廃水の処理工程に組み込まれている生物的脱窒における有機炭素源として用いることを検討した。EHAは有機炭素源として利用することが充分可能であり,C/N比として1.19を得た。消費速度は比較的低いもののBEPDも有機炭素源として利用可能であり、C/N比として2.49を得た。
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