研究概要 |
本年度は石炭灰分の溶融性について重要的に研究を進めた。 先ず,石炭灰分中に含まれているシリカ,アルミナ等典型的な化合物8種類を選び,これらの化合物を新しく作成した鉱物組成転換プログラムにかけて8種類の鉱物質を選定した。次にこれら鉱物組成に関する三元状態図を用いて2成分に限定した鉱物組成二元状態図を作成し,各鉱物質間には著しく融点の降下する共晶点の存在することを明らかにした。例えばアノ-サイト〜ゲーレナイト間には1380℃で溶融する低温の共晶点が存在し,カリ長石とシリカの間には990℃で溶解する更に低温の共晶点が存在する。従ってこれらの温度になると灰分は予想を越えた低温でも容易に溶解し始める。この共晶点が灰分の溶融試験で決められている軟化点であり,1000℃を超えると灰分が凝集し始めるのはこのためであると考えられる。 そこでこれら2成分系の共晶点と軟化点の相関性を確認するため,各鉱物質を形成する化合物を化学量論比に従って調整し、ヒ-テングステイジを用いて共晶体の形成過程,溶融過程を高温顕微鏡で観察した。これらの結果を整理すると,現在世界的に使われている灰分融点測定のゼ-ゲルコーン法による灰分の軟化点はこの共晶点と一致しており,軟化点は鉱物組成の共晶体の生成温度であることが明らかになった。 これらの結果を総合すると,石灰の溶融灰分即ちスラグとは,液相の共晶体と単一相の鉱物質結晶体或いは単一化合物結晶体の混合し合った,スラリー状態で存在しているものと推定される。
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