研究概要 |
【目的】P.anaerooleophila HD-1は好気・嫌気の両条件下において、脂肪族および芳香族炭化水素を資化する通性嫌気性の石油分解細菌である。嫌気条件下における飽和炭化水素資化経路の初期反応として、不飽和結合の生成とそれに続く不飽和結合への水分子付加が予想される。そこで基質としてn-テトラデカン(TD)を用いることにより、嫌気条件下での不飽和結合の生成を調べることを目的とした。 【方法および結果】反応は、菌体とTDを嫌気条件下(CO_2:H_2:N_2=5:5:90)で接触させて行った。菌体は、無機塩類から成る基本培地にTD(1%,v/v)を添加した培地で嫌気培養後、凍結乾燥させたものを用いた。反応後CCI_4で抽出し、フーリエ変換赤外分光装置(FT-IR)、^1H核磁気共鳴分光装置(^1H-NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)およびガスクロマトグラフ-質量分析装置(GC-MS)を用いて分析した。FT-IRの結果からは反応時間に依存した不飽和結合の生成が示唆された。次にGCにおいてTDとその不飽和物の溶出位置は極めて接近しており両者の分解が困難であったため、ICI付加により不飽和物を誘導体として検出することを試みた。GC-MSによる分析結果から不飽和結合の生成を裏付ける結果が得られた。同誘導体の^1H-NMRによる結果からも不飽和物生成が確認できたが、いずれの分析法によっても構造決定には至らなかった。現在、不飽和結合の位置を確認するための不飽和炭化水素-酸素トリメチルシリル誘導体を調製してGC-MSによる分析を行っている。
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