昨年度に引き続き、既に当研究室で分離した嫌気的石油分解細菌HD-1株の無酸素(嫌気)条件下における石油分解機構の解明を目的としてその分解産物の構造解析を行った。昨年度までに分解産物には不飽和結合が含まれる(アルケンである)ことが判っていたので、今回トリメチルシリロキシ(OTMS)誘導体を作製してガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて(GC-MS)分析した。OTMS誘導体はGC-MS分析中に本来不飽和結合のあった部分で開裂するので不飽和結合の場所が決定できる。その結果OTMSを含む質量数103と243のピークを帰属し、分解産物は1-ドデセンであることが推定された。また別途、GC分析により1-ドデセンの溶出位置と完全に一致することも確認した。 一方、本年度においては新たに無酸素条件下で石油を分解する微生物TK-122株を石油備蓄タンクから分離した。本菌の石油分解能力は先に分離したHD-1に比べてはるかに高く、嫌気条件下においても石油成分の一つであるドデカンを3日間で約70%分解した。さらに嫌気分解時における電子受容体を検討した結果、Mo(VI)であることが判った。この結果は従来にない新しい石油分解酵素発見の可能性を示唆する。また16SrRNA遺伝子の塩基配列から本菌はEscherichia属あるいはCitrobacter属に近縁の細菌であることが予想されたが、生理学試験ではいずれも一致しなかった。TK122株の石油分解経路を解析するために現在、嫌気的石油分解産物(中間体)の取得と共に石油の添加により特異的に発現する細胞内タンパク質の分離を目指している。
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