研究概要 |
平成8年度に得られた成果をふまえて,人工胚(セイヨウワサビ細胞塊),人工胚乳(栄養源を含むアルギン酸カルシウムゲル),人工種皮(パラフィン薄膜)を作製し,平成9年度は以下の知見を得た. 1.保存中におけるセイヨウワサビ細胞塊の生育を抑制しつつ,その生存活性を維持するためには,気相中の酸素分圧の制御が重要であった.細胞塊からの不定根再生と酸素分圧の関係を詳細に検討し,気相中酸素分圧として2.5〜5.0%が有効であることが分かった. 2.種々の厚さのパラフィン薄膜を施した人工種子を作製し,25℃にて,60日間の長期保存を検討した.その結果,パラフィン膜厚の増加にともなって,細胞塊への酸素供給が制限されるため,保存後における細胞塊の生存活性の低下が認められた.細胞塊の高い生存活性を得るパラフィン膜厚は,約0.5mmであることが分かった. 3.アルギン酸カルシウムゲル,パラフィン膜の酸素透過係数および細胞塊の酸素吸収速度を実験的に求めた.これらの値を用いて,人工種子中の細胞塊表面での酸素濃度31mmol/m^3(気相酸素分圧2.5%に相当)を与えるパラフィン膜厚を計算したところ,0.47mmを得た.この値は,先の実験で得られた膜厚(約0.5mm)にほぼ一致するものであった. 4.本申請課題で提案した人工種子カプセルは,セイヨウワサビ細胞塊だけでなく,他の植物細胞(タバコカルスなど)の保存に対しても有効であることが確認された.
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