本研究は、酵素免疫測定(EIA)をFlow-Injectionすなわちカラム液体クロマトグラフィー法で迅速かつ高性能に行なうための基礎的研究を目的とし、主としてカラム内部での移動現象、すなわちタンパク質のカラム固定相への吸脱着速度(拡散係数)、混合特性、吸着平衡について定量的に解析した。また、このような方法では、1mL以下の非常に小スケールカラムが使用されるうえに、装置の自動化にともない削除不可能な付属部品があるので、extra column効果についても詳細に検討した。充填剤としては、多孔性ゲルの他に迅速な物質移動が期待できるメンブレン吸着剤も使用した。 はじめにextra column効果を実験的に測定したところ、ほぼ一次応答遅れ系の関数で表現できることがあきらかとなった。また、破過曲線の形状は遅れ時間(液量)には影響されず、単純な時間あるいは液量補正だけでextra column効果のないほぼ理想的な破過曲線に一致することがわかった。一方、段階溶出についてはmodulator(塩)濃度曲線がextra column効果により広がり、またタンパク質ピークも同様に低く広がった。この溶出方法ではできるだけextra column volumeを削減する必要があることが明らかとなった。 メンブレン吸着剤は物質移動速度の流速依存性が非常に低く、ある程度の流速以上ではほぼ一定の分離性能を示した。一方、多孔性充填剤カラムでは流速の影響は顕著であり、最適分離条件の推定には流速と物質移動速度の関係を定量化する必要があった。さらに、メンブレン吸着剤では、洗浄が非常に重要であり、かなり過酷なNaOHによる洗浄を定期的に行わないと吸着性能の急激な低下と圧力損失の増加が観察された。連続くり返し操作では、特にこのような洗浄特性についても注意を払う必要があることが示唆された。今後は、pseudoimmunoaffinityリガンドについての検討を行なう予定である。
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