自己凝集性を有する光合成細菌によるヘドロ処理および生分解性プラスチックへの変換を念頭におき、まず、広島湾のカキ養殖場から採取したヘドロの化学分析を行った。ヘドロは約5%の有機物を含有し、多量のリンを含んでいた。ヘドロを200g/lほど人工海水に懸濁した液を30Cで嫌気消化を行うと、7日間で約2g/lの酢酸と約20mg/lのリン酸イオンが溶液中に放出された。ビタミン(B_1、ニコチン酸、およびビオチン混合液)の少量添加が、嫌気消化を促進した。この酢酸とリン酸イオンを含む脱離液(上清)に無殺菌のまま光合成細菌Rhodobacter sphaeroides IL106株(耐塩性)を接種して、30C、10Kluxで光照射を行うと、3日で3.1g/lの菌体が生成され、酢酸は約1g/l減少し、リン酸イオンはほぼ消失した。このリン酸イオンは菌体中に長く保持され、再び上清中に溶出することはなかった。更に本年度はこのリンの菌体内分布を詳細に検討したところ、大部分のリンはポリリン酸として菌体中に保持されていて溶出されにくい状況であることが示唆され、ヘドロ嫌気消化脱離液からのリンのバイオレメディエーションに有用であることが確認された。 さらに、菌体は凝集性が認められ、菌体分離が通常の光合成細菌に比べると容易であった。また菌体中にはカロチノイド、ユビキノン、が蓄積されており有用物質回収に可能性が見いだされた。一方、菌体中には、生分解性プラスチックであるポリハイドロキシ酪酸(PHB)がかなり多く蓄積されており、この生産条件を詳細に検討した結果、まず窒素源の制限したではPHBが多量の蓄積したが(乾燥重量の62%)リンの制限下でもPHBが多量に蓄積することが明かとなった。また、本菌は窒素制限下で水素を発生していることが確認され、PHB生成とエネルギーの振り分けをしている可能性が認められた。窒素とチンの含有量をコントロールすることにより、水素生産に回すエネルギーをPHB生産に振り分けることで、PHBのより効率的な精査庵を行いうる可能性が認められた。さらに、連続培養法やバイオリアクターを用いた詳細な検討により、ヘドロからのより効率的なPHB生産の可能性を検討中である。
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